彼は石段を上がると高台にある公園の前で立ち止まった。初夏の蝉時雨が彼を迎える様に包み込む。
「ここにいるんだろ?」
彼は呟くと公園の端にあるブランコでまた足を止めた。手に持っていた花束を置き、ゆっくり手を合わせる。
(今年も会いにきたよ)
彼は立ち上がると二つあるブランコの右側に腰を降ろした。空は突き抜ける様な青と初夏の入道雲が広がっている。
「ここから見る空は大きいな」
誰にともなく呟く。不意に隣のブランコが風に揺れた。