「ここはどこなの?」
と私は言った。
神さまと名乗る謎の男(キリスト似)は特にもったいぶらずに言った。
「世界だよ」
「あー。そういうの小学生の時よくやったわ。鼻血でんぷん画鋲とか」
「やったやった」
「いや、同級生みたいに言わないでよ。もう一回聞いていい?ここはどこ?」
「世界だよ。世界となる元の場所だよ」
「ちょっと言い方変えてきた。困ったな。理解が追いつかない」
私は少しオーバーなリアクションを取った。
まいったな、といった風に。アメリカンな感じで。
「神さま。すいません。学校の成績とかあまりよくないもので」
「うん」
「この前の実力テストとか、クラスでもかなり悪い順位だったんです」
「うん」
「化学が特にわからなくて、もう腹いせに名前の欄に『スーパー卑弥呼』って書いたら先生が怒って0点になっちゃって」
「それは冒険しすぎでしょ」
「というわけで。こんな私に、もう少しわかりやすく説明をしてほしいんだけど」
「噛み砕いてほしいと?」
「その強靭なあごで」
「見ての通り、かなりほっそりしたあごだけど」
神さまはしばらく言葉を選んでみせた。
そして説明の仕方でも見つけたのか、改めて私に向き合った。
「田山祭子ちゃん」
「あ、それ私の名前です」
「ここは何もない世界。世界の元。世界ができる前の場所」
「はい」
「ここできみは」
「はいはい」
「新しい世界を作ってもらいます」