「お前、何してるの」

ぎくりとして、ルートは足を止めた。
顔を巡らして、声の主を見つける。

浅黒い顔をした男の子。
酒屋さんの子で、ちょっと斜に構えたところが格好いいのか、女の子に人気がある。

「家に戻るとこ」

ルートは、自分の声が小さく、鋭く、敵意に満ちていることに気づいてうつむいた。
そして、返事を待たず歩きだす。

「待てよ。転校生。」

「なに」

「お前、…」

男の子は言葉を続けられないようだ。
振り返って少し待ってみたけれど、埒があかないので歩きだした。

後ろで、舌打ちが聞こえる。

いつの間にか、目が潤んでいた。
惨めな気分で、どうして私はこうなの、と呟く。