いつも呑気なあたしもさすがにこのことには焦る。


だがこうなった依智を止める術を知らないあたしはどうすることも出来ない。


「ちょっ…依智!!」


耳元で呼び掛けてみるが正気に戻る気配はナシ。


それどころかあたしの制服のリボンに手をかけている。


これは非常にマズイ…!!


そう思ったあたしは大声で怒鳴ろうとしたがそれは出来なかった。


なぜなら口を口で塞がれたから。


「ん…ンー!?」


自由な両手で押し返そうとするがその抵抗も虚しく依智の片手に束ねられてしまった。




息が上がって意識が朦朧とする中、視界に映ったのは漆黒の黒。


そして首筋に感じる熱い吐息。


やっぱり止められなかったか…と思うと同時に首筋に感じた甘い痛み。


「んっ…」


漏れた声を抑えるように唇を噛むがそれは依智の次の行動によりあっさり無意味となった。


「ひにゃっ!?」


首筋をぺろっと舐めたのだ。


甘い痛みにさりげない快感はもはやあたしを翻弄するのだった。


しかし一瞬だけ見えた依智の目は深紅の紅が漆黒の黒に戻っていたのを見逃さなかった。





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