裟菟のところに行こうとしたら掴まれた腕。


そこでようやく思い出す。


この場にいるのはあたしと裟菟、二人っきりじゃないんだってことを。


依智の存在忘れてたなんて…死んでも言えない。


ってゆうか………掴まれたら行けないんですが。


振り返って目で「離して」って訴えるが離してくれる気配はない。




どうしようかと迷っていると不意に依智の顔が歪んだ。


え…?


疑問を抱いているといつの間にか掴まれていた腕は解放されていて目の前には裟菟がいた。


「オレの気持ちも水橋の気持ちも一緒だけど…譲れねぇから」


聞いたことのないくらい冷たい声で言い放った裟菟。


だけどその声には真剣さが含まれていた。


けど聞き逃さなかった言葉。


裟菟と依智の気持ちが一緒…?


だけど譲れない?


その言葉が頭の中でグルグルと無限ループのように回る。


会って間がない裟菟と依智が同じ気持ちになるようなことなんて…なんだろ?


裟菟に引っ張られて裏庭から出て行きながらそんなことをずっと考えていた。





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