「…なぜこんなにもドアと中に差があるのでしょーか」


もう半分呆れながらそう言ったのは依智。


「…理由があったってことにしておこうよ」


宥めるような感じでそう答えたあたし。


「そうするか、美依」
「そうしよう、依智」


…なんなんだろ、この会話。


あたし達、放送室の前からおかしくなってるよね。


まぁそれはいいとして。




放送室内を物珍し気に見回していると依智が放送のスイッチを入れた。


「皆さん文化祭準備の忙しい中失礼します、水橋依智です。
かなり噂になってる、とお聞きした婚約者の話ですが彼女とはなんの関係もありません。ただの幼なじみという関係です。
それに婚約者は別にいますので悪しからず。僕の婚約者は彼女の柏木美依ですので。それでは」


依智の言った言葉にポカン状態のあたし。


そう、例えるなら鳩が豆鉄砲を食ったよう。


あたしとは対照的にスッキリしました、という表情の依智。


いや、ちょ…依智はスッキリしたのかもだけどあたしは全然スッキリできてないんだけど。


むしろこんがらがりました。





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