そのあと彼女は帰っていった…らしい。


放心状態から戻った時には西日がリビングを照らしていた。


眉間にシワが寄るのを感じながらも自室へと向かう。


もちろん、眉間のシワなんて微塵も気にせずに。


ボフッと勢いよくベッドの上に倒れ込み部屋中に響き渡るんじゃないのかってくらいの盛大なため息をついた。


眩しさを遮断するように腕を閉じた瞼の上に置き、高校に入学してからのことを思い返す。




信じられない事実をたたき付けられて居候人が来るわ、しかもそいつがヴァンパイアだの、先輩もヴァンパイアだという事実も発覚だの………


「まだ一年も経ってないのに濃い過ぎだって…」


しかしなんて言っても濃いかったのは今日の事。


依智に婚約者がいた、という一番信じがたい事実。


その時のことを思いだし再び眉間に深くシワが寄ることを感じた。


あんな可愛らしい婚約者がいたなんて知らなかった。


いや、正しくいえばあたしは依智のことを何一つ知ろうとしなかったんだ。


今更な自分に嘲笑うことしかできない。





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