色んな考えがグルグルと頭の中を回るが彼女の言葉により現実へと引き戻される。


「あの…」


遠慮がちではあるがちゃんと意思の篭った声。


「なんでしょう?」


営業スマイル?ってものを顔に張り付けながら問う。


「依智…います?」


多分今いないであろう人物の名を出された。


てかやっぱり依智の名前が出てくるってことは知り合いか。


そんなことを思いながらありのままを伝える。


…がその直後、玄関のドアが開き閉まる音がした。




「美依ー? 誰か来て…」


リビングのドアを開きながら言った依智だが彼女の姿を見た途端、ピタッと言葉をとめた。


訝しげに見つめても微動だにしない依智。


そんな妙な状況の中1番に動いたのはあたしでも、依智でもなく、彼女だった。


「依智、会いたかった」


その言葉とともに、あたしの目の前で深い口付けが。


依智は口付けしてきた彼女を勢いよく離し、唇をゴシゴシと拭っている。


え………?


「あら嫌だ。 婚約者の口付けにその対応はないんじゃなくて?」


放心状態のあたしに爆弾を投下したのだった。





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