家に帰るのに、迎えの車なんて呼べません。




勝手に早退したことをお父様に告げられたらと思うと、


途端に怖くなってしまいます。



多分、四六時中私に監視がついて、自由なんて存在しないあの暗い闇のなかに落とされるのですから。



私の家には、半地下になっている部屋があります。

昔はそこに当時の当主が愛人を隠したそうです。



けれども、そこはあまりいい場所とは言えません。



階段を下り、忌ま忌ましい鉄格子を抜けるとその部屋は見えます。



中は薄暗く、嫌にじめじめとしています。なのに、半地下の作りなので光りは入ってくる。

……希望のような光りが。




匿われていた愛人はどんなふうにこの光りを眺めていたのでしょう?



匿われているなんて、上手いいいかた。


実際は幽閉や監禁に近い。


そんな場所に閉じ込められる苦しみ。



私はわかってしまいます。