「だ、だって!!
桜が梓とか言うから!!
あんな奴関係ない!!」
出ました。
必殺、照れ隠し。
もう、梓さんのことになるといつもこうですね。
くすくすと思わず笑みが零れます。
けれど、渚ちゃんはやられたままでは終わらない女性でした。
「桜だって、
菖蒲といい雰囲気になってるんだろう!?」
菖蒲さん……。
その名、ひとつで私の心は掻き混ぜられたように乱れてしまう。
気づいたら、
もう、足が前へ進むことを拒みます。
私は、菖蒲さんとは結ばれない。
もうすぐ、愛しい貴方ではない人のところに嫁ぐ身の私。
私に選択する権利はないのです。
名家の女として、生まれた私は、
せめて家が少しでも有利な立場に昇れるよう、
それを助けるただの駒。
そう思うと、ぽたりぽたりと、
感情が流れおちるように
瞳から雫がおちるのがわかりました。


