会う目的──だと?

「……あなたは何者なんだ?」

「先ほども言ったようにいいじゃないですか、私のことなんて。そのうち分かりますよ」

彼女は不思議な笑みを浮かべていた。そのうち……か。『今度』と同じくらい『大人』が好きな曖昧な言葉だ。

「俺のことどの程度知ってるんですか?」

「……話してくれる気になったみたいね」

彼女も自分用に同じワインををグラス注いだ。

「会社をクビになって明日から無職生活になるってことくらいかしら」

そんだけ知ってれば十分だよ!

「……なんかさ、いろいろ考えるのもめんどくさくなってきたぜ」

グラスワインで酔い回る程脆くはないハズなんだが。
すきっ腹でアルコール入れたせいか──。

今までこだわっていたこともどーでもよくなってきたんだ。
いっそのこと誰かに話したら楽になるのかなって。



「見つからねぇんだよ、自分の夢ってやつがさ。何がしたいのかどんな人生を送りたいとか、俺には分からねぇ」

こんな世の中でそれが見つけられたらどんなに幸せだろうか……って思うんだ。