ふと遠くのほうに人影。


 忘れもしない、山田君の時と同じ大きさ、形の影。


「千隼!!」

 無意識のうちに叫んだ。



 もう、向こうがどう思っていようが関係ない。

 そんな気がした。


「ひなみ…? 何かあった?」


 ろくにしゃべっていなかったけど、ずっと変わらない千隼の声。


 後悔だけは嫌だよ。


 振られたっていいんだ。


 よく漫画である、振られたって後悔しなきゃいい。


 そんな気持ちあるはずない。

 そう思ってたのに、あったんだ。


 こんな近くに。


「千隼…き…」


 でもね、やっぱり怖いんだよ。

 後悔はしたくないけど。


「何? 聞こえない」


 千隼が私と同じ目線に腰を低くした。


 顔が近い。


「顔赤いけど…。」

「千隼!! 私ね、千隼のことが好き!!」