「ちょっと待ってください!! おじさま!! おばさま!!」

 またリビングに響いた女の人の声。


 そこに立っていたのは図書館で千隼に声をかけていた女の人。


 なんでここに?



「桜ちゃんじゃないかぁ~!!」


 え…?


 この人が桜ちゃん?


 私より身長が高くて、大人っぽい顔つきで、大きなネコ目で、胸が大きな女の人。


「何? こいつが桜って人?」

 そう言ったのは私ではなく、千隼。


 …千隼知らなかったの?


「はい。 私…宮内 桜ぁって言います~。 千隼君、仲良くしようねっ♪」

 明らかにさっきとは違う声。


 甘ったるく語尾を軽く伸ばす声は嫌気がさした。


「うざい。 離れろ。」

 そう言うと千隼は私を引き寄せた。

 ひゃっ…。

「ひっど~い。 千隼君っ!! 私たちこれから結婚するのにぃ。」

 桜…さんは千隼をウルウルした目で見つめ私には千隼に気付かれない程度ににらまれた。