「…教えてあげる。 樹里菜と千隼は幼馴染。 千隼は世界的に有名な木下グループの息子なのよ。」


 千隼が?

 家は飛び出してきたって…。


「樹里菜は木下グループの取引会社の一人娘。 まぁ、千隼は覚えてなかったみたいだけど…。」


「それがどう千隼と私が別れなきゃいけない風になったの?」


「樹里菜は…価値のあるものは全部手に入れたい主義なの。 千隼は顔もからだも綺麗。その上、金持ちなのよ? 手に入れないでどうするの?」


 何を言ってるの…?


 じゃぁ、人のものでも簡単に奪い取っちゃうってこと?

「そんなの…駄目だよ…。」

「は?」

「そんなこと思ってるんだったら千隼とは別れない。 そんなの千隼と付き合う価値ない。 渡せない!!」



 私は屋上を飛び出した。



 いや…嫌だよ…。


 樹里菜ちゃんはおかしい!!


 階段を駆け降りるたびに流れてくる涙。


「なん…で…?」


「ひなみちゃん? どこ行ってたの?…え…?」


 クラスに戻っても次々とあふれてくる涙。


「ひなみ! どうしたの!?」

「…樹里菜ちゃんが…」