不快な音と共に、男の腕が、あらぬ方向へ曲がった。

「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」

悲痛な叫び声を上げ、踞る男。

でも、そんなこと、私には関係ない。


「痛い?」


そう尋ねると、恐怖に満ちた表情で、首を縦に何度も降る。


「そっか…痛いんだ。

でも、私の心はもっと痛い」


踞った男を見下ろしながら、そう言う私。

内心、なんで私がこんなことをできるのか、不思議で仕方がなかった。


「た、助けてくれ…!
私たちが悪かったのだ…
何だってする!!
だから、命だけは…!!」


骨の折れた腕を庇いながら、私に向かって土下座する男。

私は、その男の首を掴んで、床に叩きつけた。


「何でもする?

…そっか。
苦しいから、そんなこと言うんだね。

今…楽にしてあげるから。」


男にそう語りかけた私は、掴んでいた首を、思いっきり折ってやった。


「無様ね…」


事切れた男を見下ろしながら、そう呟いた。


「…」


再び静かになった部屋。

最初と変わったのは、死体がひとつ増えたことと、名前などなどが分かったこと。

私の名前は、カレン。
この部屋で、ずっとモルモットとして扱われてきた人間。
それをしてきたのは、この白衣の男たち。


「…」


私の中に、よくわからない感情が芽生え、体が勝手に動き出す。


扉を出て、廊下を歩いて、白衣の人を見つけて、殺して、血を浴びて。

そうやって、ひたすら建物の中を歩き続けた。

時々何かがうるさく鳴ったり、私に何かを飛ばしてきたり、私を説得しようと語りかけてきたりしたけど、気にせずに歩き続けた。


何かをされても、特に痛みを感じることもないし、すぐに傷も塞がる。


たいして気にもせず、ただ、歩き続けた。



























建物の中に人の、生き物の気配がなくなった時、私は、上から下まで真っ赤だった。


「…」


それに何かを思うこともなく、とりあえず、建物の外に出た。