出発前に少しだけ、醒燕と二人きりて話す時間を得た緋焔。


二人は人払いをした部屋に入ると、真剣な表情で話し始めた。


「分かってると思うが……
緋焔、絶対に気を抜くなよ?
相手はどんなにいい女でも、死刑囚なんだからな?」


「分かってる。
司祭から鍵を預かったけど…
どうやら外す機会は無さそうだな」


緋焔の軽口に、醒燕も同じく冗談めかした返事で返す。


「そうだな。
お前、惚れんなよ?
相手に惚れて、ついつい鎖外したら殺されちゃいました、じゃ笑えないぞ?」



「当たり前だろ?
にしても、この試練俺が受けてよかったな。
お前だったら即そういう展開だろ?」


「お前なー
俺をなんだと思ってるんだよ?
……………緋焔」



それまでの軽い笑顔が、
醒燕から消え、
フと真剣な表情になる。


つられて、緋焔も。



「ちゃんと、帰ってこいよ、緋焔。
俺は、お前意外の王に膝をつくつもりは無い」




それは、絶対の忠誠の言葉。




「………ああ。」



緋焔は、頷いた。















その様子を、外から窺っている物が、一人。


「ふぅん。
次代は、なかなか良い部下を持っている様だな。
―――だが」


スッと細まる、輝く瞳。



「あれでは宝の持ち腐れ、か」



クツクツと喉の奥で笑うと、
その人物は気付かれない様
そっと立ち去った。