「行ってきまーす」

玄関でスニーカーを履きながら、リビングの方へと声をかける。


「あまり遅くならないようにね、女の子なんだから」

「ハイハイ、分かってるって」


奥から姿を現し、毎晩同じ台詞を言う母を適当にあしらい、
大きな黒いギターケースをぶら下げて、夜の道をとぼとぼと歩いていく。



高台から見渡すことのできる海辺の風景を背に目的地へと向かう。


歩きながら空を見上げると、たくさんの星が輝いている。
この辺りは街灯も少なく、大きな街でもないので星が綺麗に見ることができる。


通り過ぎる電車には、まだ終電には時間があるからか、
さほど人が乗っていないようだ。





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