告白[短編集]

「はっ初めてだったんた。
つい、魔がさしたんだ。」


何言ってるんだこいつ。


今日だけの痴漢にするつもりか。


「私は、彼女の前にいて、あなたの話も聞こえてましたよ。
あなたは『今日も』とか『彼氏になる』とか話していましたが。」


サラリーマン風警察官が落ち着いて答えた。


痴漢はまた騒ぎだした。


「こいつだ。
こいつが誘ったんだ。」


痴漢は、綾を指差した。


こいつ。


なんて事を言うんだ。


「待て。」


踏み出した俺を、父さんがとめた。


「彼女が誘ったんですか?」


にこやかな顔。


「そうだ、こいつから誘ったんだ。」


「そうなんですか?
えー、でも警察官の人そんなこと聞いてないようですよー。」


「昨日、そう昨日だ。
昨日こいつに誘われたんだ。」


「えっ昨日ですか?
昨日彼女に会ったんですか?」


「そうだ、昨日こいつに会って誘われたんだ。」


こいつ、さっきまで初めて痴漢したって言ってたのに、昨日綾にあったの認めた。