ん?もしかして…目合った?

いや、そんなはずはない
と言い聞かせ、横を通りすぎる
だってだって私たちはもう
"恋人"じゃないんだから

あいつとバイバイしてもう1年
未だに彼しか好きになれない私
何回伝えても変わらなかった
そう、完全に私の片想いなんだ

こんなに好きなのになー
なんて思いながら
少し涼しくなった空気を吸って空を見上げる
期待しちゃいけない
とかの問題じゃないんだよ
振られすぎて期待もない
可能性すら信じてない
なのに嫌いになれないのはやっぱりあいつしかいないからなのかな?


「あのさ…」


隣の校舎まで続く渡り廊下に差し掛かった時
後ろから聞き慣れた声がした
すごくすごく愛しい人の声
振り返らなくてもわかる
まだこの頭にしっかりインプットされてるから

私は聞こえてないフリをして歩く足を速める
きっと私に話し掛けた訳じゃない、とわかりながら


「ちょっと…きて」


だけど、私はわかってなかったらしい
私の手首から伝わる温もりがそれを教えてくれる


「何、離して」


そう言って体を180度回転させる
うれしいはずだったのに
そんな気持ちとは裏腹に、思った以上に低くなって出た私の声
ほんとはドキドキいってるの、気付いてるのかな?
ありえないぐらい不器用な私には"素直さ"なんて全くといっていいほどなくて
彼を直視できないまま俯いた