「人の愛を知らずに育った。だから、お前は汚い女なんだ。ちっとは反省しろよ。この汚れた女が」



いつだったか
別れ話のとき
そんなふうに
あたしのことを呼んだ男がいた。



ひと言もしゃべったこともない、

いままでだれにも話したことのない、


あたしの過去。




それをさもすべてわかったように、

男はそう吐き捨てた。




あたしの過去。




思い返したくもない。



だけど、
なにかの拍子に
たまに思い出す。




ビデオテープにでも録画したように

記憶が鮮明に………。





児童養護施設。





物心ついた時には
そこにいた。




似たような境遇の子供がたくさんいた。



どんな事情で彼らがそこにいたのかまでは知らない。



ただ
あたしのいた施設に限っていえば、


彼らはよき友達であり
ライバルだった。



いつも、
みんな仲良しかと思えば
そうでもない。