あたしの背中で眠ったように身じろぎひとつしなくなった。



けど、
立ち止まらない。



その顔を見れば、
きっと最悪の現実を
受け入れるはめになる。



まだ死んじゃない。



そう信じていても、
その気持ちがいっぺんに
吹き飛んでしまいそうだから。



だから、
あたしは
ひたすら前へ進む。



前を向いて、
けっして
振り返ることもなく。



涙を
この忌々しい
雨のせいにして。






ピーポーピーポー――。





救急車のサイレンの音が聞こえてきたのは、それからだいぶたってからのことだった。