その目を背けたくなるような惨劇に、あたしは身動きもできずにいた。



自分を奮い立たせるようにして、ひかりの様子を恐る恐る窺ったのは、それからしばらくたってから……




「ひかり!」



「……」



意識はあったが、
苦しさと痛みで
声が出ないようだった。



「大丈夫か!?」



愚問だった。



大丈夫なわけがない。



左の脇腹。



白いチュニックに
赤いものが滲んでた。




苦痛にゆがんだ顔は、
まっ赤な血でまだらに染まってた。





そばに転がったナイフ。





そして
ひかりの手に
しっかりと握られた、
あのカッターナイフ。



それらはまぎれもなく
ここでいままさに起った
悲劇を作り出した、
忌まわしき道具。






救急車。



すぐに電話した。



いろいろと聞かれたが、
半ばパニックで、
うまく受け答えられたか
自信ない。