さっきまで小降りだったのに、いまでは大降りになってる。



ひかりのピンクの傘に一緒に入ると、細心の注意を払いながら駅を目指した。



それらしい
男の影はない。



それにちょうど
目の前には
駅に通じる地下通路の入り口。




助かった。



ここまで来れば
もう大丈夫。



あとは
駅の雑踏にまぎれて、
こないだみたいに
電車に飛び乗って帰るだけ。



その一瞬の気の緩みがいけなかった。



あっ!



……。



階段の途中。



足を滑らせ転倒した。



傍目には、
この雨で滑りやすくなってて、

それで階段から転げ落ちた、

そう映ってもしかたのない状況だった。



が、
背後にすっと忍び寄った
ただならぬ気配を感じたし、

背中を押された
その感触はまだ残ってた。



「う、うっ~……」



ひかりともつれ合うように転がり落ち、

そして
折り重なるように倒れてた。