『毎度ご乗車ありがとうございます。次の停車地は桃ヶ谷。次は桃ヶ谷。お降りの方は……』



車内アナウンスが
あたしが降りるバス停を告げる。



ピンポーン。



ゲッ、まじで?



降車ボタンを
あたしより先に押した女がいた。



すみません女!



冗談だろ!?




ったく
おなじのところで降りんなよな~……。



しかし
だからといって

それを妨害するなんて権利はわたしにない。



まあ
あとから
こっそろ降りれば気づかれないでしょ…。



バスが止まる。


すみません女が
運転手に
「ありがとうございました」
と丁寧に
お辞儀までして降りる。



それから
ただ気づかれないように
そっと
いつものように
さっと降りればいいものを…。



「どうも」



つい
いっちゃったよ。



定期券だけ見せて
なにもいわないのも
なんか無愛想な気がして。




それがまずかった。