……そうだ。







私の部屋に、スペアキーなんて存在しない。




私が今持っているものと、合鍵がひとつあるだけ。

その合鍵を勝手に持っていったのは。


それを嬉しく思って、放っておいたのは。









「…ぁっ…ぜ、ん」





ゼン。




……ああ。





そういうこと、だったの。





ゼンの身体を抱き締めた。

愛しくて、しょうがない。

彼もそれに応えるように、私を抱き締める力を強めた。




彼が愛しい。

狂おしいほどに。





その柔らかな髪。

漆黒の中で、動猛に光る瞳。



私を抱き締める、腕も、全部。





愛しくて、愛しくてしょうがない。




「シノ……お前…」








ねえ、ゼン。




「……ぜ、ん……私…」





もう、わかってしまった。



わかって、しまったの。