私は手元にあったシーツを手繰り寄せる。
だが身体が全て隠れるはずもなく、白い手足はさらされる。
「ねえ私、なんでここにいるのかとか、昨日のことよく覚えてないんだけど?」
煙草に火をつけながら、いまだ私の顔を凝視する男に問う。
男は観察するかのように、じろじろと私をみた。
不快に思って眉をひそめる。
すると、何かに気付いたように目線を落とす。
しかしその先には何もない。
「…?」
「あー、昨日酒飲んでたら…こうなった」
悪びれる様子もなく淡々と話すところを見て、女慣れしてるなと感じる。
そりゃそうだろう。
この容姿なら女がほっとかない。
寝ているときはわからなかったけれど、男の瞳は鋭く、思わずぞくりとした。
それがひどく魅力的だ。
そんな男に抱かれたのか。
記憶はないけど、得したんじゃないの?
私ってば。
浅はかな考えに至ってから、大事なことを思い出す。
仕事に行かないと。
「そう。今何時?」
「10時半」
「やば…12時からバイトだ。ここどこかわからないから、送ってよ」
「は…?バイト…」
「うん。駅まででいいから」
男は顎に手を当てる。
何かを考えたようで、その眉がピクリと動いた。
「…バイト、な」
「うん」
「わかった」
男はそう言うと、自分のパンツを拾って履いた。
それを習って服を纏う。
素っ裸で会話してた自分に呆れる。
私は男が入れたコーヒーを飲んで部屋を出た。
今更だけど、男の独り暮らしにしては豪華な部屋だった。