ゆらゆらとたちこめる紫煙をぼんやりと眺める。

冷たい空気が窓から入り込んで、裸の身体を冷たくした。






さて、どうしたものか。






隣に眠る男を横目に煙草の灰を風にのせる。




擽るように私の脚に放り出された腕は、ぴくりともしない。




さっき顔を覗けばなかなかいい男だった。




しかし、一体こいつは誰だろう?



こんな知り合いがいたら忘れるはずがないんだけど。

まさか、見ず知らずの男にお持ち帰りされたなんてマヌケすぎるし。



昨夜のことを上手く思い出せない自分に苛立ちを感じる。


もう一本、と手を伸ばしたらずるりと男の頭が動いた。





「ん…」



綺麗に揃えられた眉毛がハの字型になる。

寝言なのか、セクシーな呻き声を小さくあげた。




なにか悪い夢でも見ているのだろうか。


顔色もよくない。




「ちょっと、起きてよ」



遠慮がちに何も身に付けていない男の地肌に手を触れる。



すると瞼がぴくりと動いて、ゆっくりと瞳が開いた。


「…起きた?」



私の顔をみたまま反応がないので、まだ寝ているのかと疑問に思う。

しかし返ってきたのは案外、しっかりした声だった。



「ああ。…起きてる」