あれ以来、ゼンが家に来なくなった。
と、言ってもまだ1週間しか経っていないが。
それでも、あの頻度で来てた彼がプッツリ来なくなるもんだから、私も少し心配になる。
体を壊したんじゃないか、とか
仕事がめちゃくちゃ忙しいんじゃないか、とか
私に飽きたんじゃないか、とか。
そこまで考えると、馬鹿らしいと思ってやめる。
だって、ゼンは私のモノじゃない。
深入りしないと、決めたはずだ。
どうなったって、関係ない。
ただ一時期、同じ空間を共有しただけ。
どんな感情もないことを、再確認する。
そして、我にかえる。
化粧をしようと思って、鏡の前に立つと、辛気臭い自分の顔が映った。
一息ついて、自分の長い髪をブラシで梳くと、異変を感じた。
「あれ…」
なんだ、これ。
左の鎖骨と首の付け根の間に、アトがついている。
ちょうど山形にカーブして、点々と小さな凸が並ぶ。
「…!」
その正体に気付いて、私は絶句した。
ぞわり。
悪寒が走る。
これ、噛み跡だ。
それも、治った後のもの。
でも傷が深かったのか、アトだけは残った。
一体、誰が…
必死で考えるが、わからない。
何時つけられたのかも、何故つけられたのかも。
私は自分自身にゾっとした。
こんな傷、私は覚えていない。