「善、入るぞ」
俺の返事など待たずに開くドア。
部屋の中に入ることはせず、そのままスガヤは壁にもたれた。
酒でも飲んでいたのだろう。
恍惚とした表情を浮かべ、お気に入りの葉巻をくわえている。
「…なんか用かよ」
俺が不満の声を漏らすと、スガヤは鼻で笑った。
「仕事さ」
わかっているだろ?
とでも言いたげな口調。
まあ、わかってはいる。
わかってはいるが、そんなの無理に決まっている。
「やらない」
「…はは。そう言うと思ったがな」
スガヤは眼下の志乃に視線を向ける。
俺は何故だかいたたまれない気持ちになり、目をそらせた。
「可哀想になあ」
いつかも聞いたセリフだ。
もちろんそこに同情に意はない。
「本当に可哀想だ。なあ、善もそう思わないか?」
「そんな芝居いらねえよ。いいから出てってくれ」
「まあまあ、そう言うな。ここに来た一番の理由はな、お前にいい知らせを持ってきたのだよ」
「いい知らせ?」
半信半疑で問いかける。
いい知らせなど、この男から受けとった記憶は今までにない。
スガヤは自分のコートのポケットに手を突っ込むと、そこからなにやら取り出した。
「これが何か分かるか?」
小さな白い紙袋。
ポケットに入っていたせいか、ところどころ曲がっている。
「……クスリか何かか?」
「おお、正解だよ。エースは違うな」
茶化すスガヤを無視して問いかける。
「なんのクスリだよ?ヤクか?それとも、コイツを復活させる薬…なんてものか?」
俺は顎で志乃をさす。
半ば自棄気味にそう聞くと、意外にもスガヤはコクリと頷いた。



