―不在中
引き戸の扉にぶらさがっている札
だけど…
―ガラガラ
「先生…?」
引き戸は簡単に開き
「…遼太」
望月はいつもの椅子に座っていた
「今、帰り?」
部屋は冷房がかかっていて
とても涼しかった
望月が眼鏡を直しながら俺に近づいてくる
「いえ、ちょっと用事で…」
俺は顔を赤くしながら望月を見つめて言った
「先生、あの…夏期講習の日って学校にいますか?」
「―夏期講習?たしか下旬だったよね…?」
望月は白衣のポケットに手を入れ
目線を上にあげながら暫し黙り込んだ
「たしか…二十九は当直だったかな」
ニッコリ笑って俺に言った
「その日だけですか?」
「あぁ、基本的に日直は一日交代だからね」
ずっといるのかと思っていた俺は
少し拍子抜けをしてしまった
「…残念そうな顔してる」
望月は引き戸の鍵をかけると
俺を優しく抱きしめてきた
「そんな事…無いです」
そう言いながらも
望月の背中に腕を回す俺
