“俺も詳しくは知らないんだけど、先生の実家が名古屋にあって、かなりでかい会社らしくそれを先生が継ぐらしい”



廊下を物凄いスピードで走る俺



“元々そういう約束で教師になったらしいよ?二十九までは自分の好きな事をやっていいって”



階段も二段飛ばしで降りる



“辞表も、もう学園長に出してるってウワサだぜ?”





向かう先は


もちろん保健室―







―だから、俺に言えなかったんだ…



ずっと一緒にいたいって俺が言った時



尚輝さんは

言える訳がなかったんだ!






望月は

やっぱり俺に、嘘をついていなかったんだ


俺が何度も問いかけても

笑って俺の頭を撫でるだけで



望月は何も答えてくれなかった



寧ろ

言えなかったのかもしれない




名古屋に帰る事を

初めからわかっていたから


実家を継ぐから

この先も一緒にいられない事を






ずっと昔から知っていたから!



俺は疑ってばかりで

望月の気持ちなど、これっぽっちもわかってあげられてない





誰よりも


尚輝さんを理解していたはずなのに―