「…もうこれはねぇーんだ…。他の部分にしてもらえ…!」
自分の後ろに並んでいた背の高い男の渡した伝票には『レバー』と書かれていた。
男はガッカリしながら注文をとった客のもとへ行く。
「…何やってんだてめぇは!!」
その直後、鈍い音と共に男は吹っ飛んだ。
男が倒れたことで客の大きな体があらわになった。がたいが良く顔はブルドックのような骨格で、目は頬の脂肪で垂れていた。
注文の嵐がやんだ…。
客の中には怒鳴りつけ、ずっと顔をこわばらせながら座る者もいれば 料理が着くのを心待ちにして微笑む客もいる。
最初に自分が注文をとった客は後者の方であった。いかにもここへ来慣れている感じだった。
「…3番テーブルの『頬肉』と『手羽先』だ…!!」
厨房から大きな声がしたのと同時に湯気に包まれた料理が出てきた。


