仕事場はトンネルの途中にあるようだ。
普段は扉が壁とカモフラージュされて一般人には分からないが、一度行けば永井でも分かる場所にあった。
それがあの最もにおいがきつい場所だった。
「…うっ…!」
先頭の人が扉を開けると一気にそのにおいが充満した。
「…永井くん。大丈夫か…?」
二葉のシャツにべっとり付着している血を見る度にさらなる吐き気に襲われた。
「…は…はい…なんとか…」
「…今日はシフト何時間にした…?」
「……0時から2時の二時間です…」
「…そうか。…がんばれよ!」
二葉のグッドサインに無理矢理だが合わせた。
二葉は非常にサッパリした感じの男前だった。背も高くこの格好でイタリアレストランで働いていても不思議ではないくらい似合っている。
世間で言うイケメンとはこのことなのかと思う程だった。


「…さあ入ろう…!」

ぞろぞろと扉の中に人が吸い込まれていく…。だんだんと店内のBGMが聞こえてくると心臓の音が誰かには聞こえているのではないかというぐらい体中に響いた…。


ガヤガヤと人々の声も聞こえてくる…。…笑う声…怒鳴る声…騒ぐ声………
ずっと自分の足元にある板張りの床を見ていたため店内を見回す勇気がなかなか出なかった…。

…そしてついに店内を一望できるところまで来た…。
「…ここが今日からの仕事場だ…!」

まず目をゆっくりあげ、徐々に首も起こした…