…オーナーとしても家族の大黒柱としてもいろいろ大変なんだと思った…。
少しばかりこの人を尊敬しつつあった。

「…質問はもうないのかしら?」
「…大丈夫です。ありがとうございました!」
「……いえいえ!じゃあ今日のところは帰ってゆっくりなさい。その用紙忘れないでね。」
立ち上がってこの部屋のドアを開けて出迎えてくれた。
「…ありがとうございます。」
「はい!じゃあもう暗いから道中気をつけて!」
時計はもう8時半をさしていた。
「…はい、ではまた!失礼しました!」

来たときのようにガチャンとドアの音が再び響いた。

また何分もかけてキツい匂いがするトンネルを抜けた。
入り口のドアを開けてもまだトンネルにいるような感覚にさせる程辺りは暗くなっていた。

止めておいた自転車に乗って立ちこぎで家まで帰った。
この日もう一人面接があったようで聞いたことがあるドアの閉まる音が背後で聞こえた…


木々が立ち並ぶ道を出ると街頭がいくつも見えて少し安心し、ゆっくりペダルをこぐことにした。



「…ただいまー…」
家に着くと案の定 夕飯を終えたらしく家族全員がテレビを見ていて盛り上がっていた。
「…お帰りぃ〜…」
妹はせんべいを食べながらだが真っ先に返事をしてくれた。
「…太るぞ…。」
「…う〜…いいの!お兄ちゃんは黙ってて!!」
「…あっ、優…お帰り…冷蔵庫にあんたの夕飯入ってるわよ…」