相変わらずガヤガヤとしている…

しばらくその音に慣れようと目を閉じ、足を踏み出す…







いや…何かおかしい…

いつもよりピリピリしている…

この時間は『クビ』になる者が決まって少し落ち着いているはずだ…





部屋に入り、目を開けると真っ先に中央にいる二葉さんに目がいった。



何が何だか状況を把握しきれない…

そんな永井の気持ちを察して大島が近づいてきた。


「…田所って奴がさっきクビになったんだがよ…田所が最後に、二葉が今日で辞めることを公にバラしやがった…」
「…つまり…」
「あぁ…客にも同僚にも、二葉は勝ち逃げすると思われちまった…。この瞬間全員敵になったな…」
「…………」
言葉が出なかった。


ただただ二葉に非難を浴びせる声と二葉の暗い背中しか見えなかった。

「…おめぇを信じた俺がバカだったよ!」
「……俺らは借金抱えてがんばってんだ!お前が稼いだ金よこせ!!」
「…二葉…お前…1人で逃げるつもりかよ!」
「………裏切り者だな…」

二葉はただ黙って下を向いているだけだった…



二葉さん…ホントに大丈夫かよ…

ホントに逃げられんのかよ…