ボサボサの髪、昔のアニメとかに出てきそうなほどあちこちに生えているヒゲは もはやどこまでがヒゲで どこまでが髪なのか分からないぐらい紛らわしかった。
口はヒゲで隠れてしまっており 話すとヒゲが上下に動いているかのようだった。


「……ご注文は…?」
顔を覗き込むかのように聞く。
しっかり覗かないと分からなかったが永井がいる方とは反対方向にある 男の右手だけがテーブルの上に不自然に置いてあった。何かを覆っているような そんな風に思えた。

「……とりあえず…ビールを…」
「………は…はい…」
伝票に注文を書きながら、さりげなく手の中を覗く…

……白い…………紙…か……?

「……おい、ボウズ!!何見てやがる!」
突然 大きな声で怒鳴られたため体がビクッとした。
「……すいません…」
逃げるようにカウンターの裏へまわった。


「……はぁ…」
ため息をしながら『ビール』と書かれた伝票を貼り付け、表へ戻る。

酒を作れる従業員がそれに気づき伝票を確かめてはビールをジョッキに注いだ。
あとはそのままその従業員がビールを提供する。


カウンターの男はというと、なぜかその後は周囲を気にしだし始め、合間をぬっては何かしらペンを走らせているのだった…。