¥時給1000万円



静寂から一気にざわつきに変わった部屋…
注文が殺到した…。

6番テーブルの男が手を挙げた。
「…誰でもいいから注文とりに来ーい…!」
明らかに男の視線は苅谷を向いていた。

「…どけ…!」
苅谷は注文を取りに行こうとした小柄な従業員を右腕でひょいとどけてガツガツとテーブルへ向かった。

伝票を厨房へ渡し終えた永井は彼を目で追った。
「…しっかし…惨めだねぇ〜…。ついさっきまでは賭ける身だったのに今では賭けられる身か…」
「…何がいいたい…!!」
「……いや…大したことではないんだが…最近はそんな奴が多くなってきてねぇ…。前まで満席だったこの店も今は客が三分の一までになった…。みーんな従業員になっちまったのさ…!」
「………それがどうした……。」
「……警告だけしておくがここの従業員のシステムを知ってる人間が従業員になったら…自分の欲を通すのではなく普通は借金を全額返済できる分だけ稼いで出るという考えで働く…。………つまりお前みたいに一時間だけ働いて『はい、さようなら』という感じだ…。」