¥時給1000万円

「………は…はい…」
戸惑いを感じながらも伝票に書く。
「……あの…どの部分が…よろしいですか…?」
人の肉を提供するのは反対なのだが、仕方なく聞いた。
「……どこでもいい…。おすすめのところをくれ…」
「…分かりました。」
伝票に『おすすめ』と書き足すと軽くお辞儀をして厨房へ持っていった。


丁度その頃大島は、おかしな客に手こずっていた。

注文を繰り返すと『やっぱり違うもの』と言っては注文をコロコロ変えていた。


いい加減に帰らせてくんねぇかなぁ…


明らかに大島の表情が硬くなってきた。

永井には徐々にテーブルの配置を覚えてきたためその客が何番テーブルに座っているのかが即座に分かった。その客は 初日にクビになる法則を知っていると言ってくれた あの酔っ払いと一緒の12番テーブルに座っている。


他のテーブルにも目を向ける。

カウンター席はC1〜C8番まであり、今日は誰も座っていない。
カウンターを背にすると、人が三人程通れるぐらいの距離の先に等間隔で4人掛けの四角いテーブルが4つ置いてある。右からテーブル番号が1、2、3、4である。

背の高い従業員を吹っ飛ばしたブルドッグのような客は昨日と同じ1番に座っている。