がさがさ、がさがさと隣で物音がする。

私は壁越しにそれを聞くたびに、既に居ない住人が自分や他の奴等を脅かしている事を、痛いほど見せつけられてしまうのだ。

あいつは、まだ。

まだ、あそこにいる。

震える足を必死に動かし、私は隣にある彩弓の部屋へ続くドアを開けた。

破れた教科書、壁には彩弓がつけたカッターの傷が無数に残され、制服は『あの日』のまま、赤黒い染みがベトベトに固まっていた。

妹の彩弓は、私が中3、彩弓が中2の時に学校の屋上から飛び降りたんだ。