派遣先でまた失敗をしてしまった加奈枝は、はぁと溜め息を吐いてバスに乗り、半ばスプリングが壊れた椅子へ腰かけた。

失敗とはいえ、自分が責任を取る必要は無いのではと彼女はモヤモヤした気持ちを抱き、今にも降りそうなどんよりした夜空を見上げる。

昔から、謝るのも誰かより劣るのも不快だった。

学校だって、わざと自分より見かけや成績、頭の中身が劣る奴等と付き合って、加奈枝は賢いとか、可愛いとか称賛を浴びる事で漸く自分への自信を築いていたのだ。

だが、会社は違う。

いくら見かけが残念でも、手際が良ければ加奈枝より勝っている、と評価され、加奈枝が賢いと称賛されていた環境よりも、はるかにレベルの高い奴等が存在するのだ。

『こんなこともできないの?大学で、いったい何を勉強して来たのかしら。いつまでも学生気分じゃ、仕事を渡せないんだけど。』

自分にも、他人にも厳しく信用の厚い上司、永山葵衣に注意され、すいませんと頭を下げたが納得が行かない。

いや、自分が頭を下げるなんて考えられない。

下げてやったんだ、と加奈枝は無理矢理そう考え直そうと、再び溜め息を吐き出した。