愛と云う鎖


青年のそんな不敵な微笑みでさえ美しく感じてしまう。


ー嫌だわ…、この方はヨーゼフに対してあんなことをした人ですもの。憎い相手なのよ…ー

マリーは心の中で自分に言い聞かせ高鳴る胸を抑え付けた。


「何故俺の顔を見ていたのだ」

「…貴方のお名前を存じ上げておりませんので、お名前を伺おうと思っただけです」


マリーは青年を睨んでいた瞳をプイッと逸らし窓の向こうに視線をやった。

外はもうすぐ真昼時。

太陽がほぼ真上からギラギラと照りつけている。


「俺の名は、エヴァン•グルータス•ディクト。長ったらしいからな。エヴァンでいい」


突然の声にマリーは後ろを振り向き青年を見た。