キミが刀を紅くした


「そ、宗柄」


「俺は人が思ってるよりも割りと自制心の高い男なんで、こんな薄暗い部屋だが勘弁してくれ華宮」


「武士が土下座なんて、止めておくれ大和屋の旦那。旦那に謝られる事なんて何もないはずだよ」


「いいや、それがあるんだ」



 沖田と村崎が華岬を最後に消えたと言う事は、多分華宮は紅椿の正体に少しばかりは思い当たる節があるのだろう。何せ吉原の母親だ。吉原から見抜くだろうし。

 それに加えて紅椿の暴走。

 華宮は確かに間接的には徳川に仇を成したのかも知れない。それは慶喜殿が判断する事だから俺は情けないが何とも口を出せない。



「これからも俺はお前にきっと迷惑をかける。だが、黙っていてくれ。お前の命の為にとは言わないがどうか――黙っていてくれ」


「それは例の、殺し屋の事かい。それとも村崎殿がする事?」


「村崎が何かするのか?」


「ああそうか。土方殿も仰っていた、聞いちゃいないんだね旦那」


「……何の事だ」


「口止めされてる。こればかりは旦那には、絶対に言えないよ」


「俺には、か。ならその村崎が仕出かす事も含めて黙っておいてくれ。紅椿の連中にも、当然吉原にも言うな。墓まで持って行け」


「無理やり聞かないのかい。旦那は村崎殿の事になると熱くなるって土方殿も丑松も言ってたのに」


「はっ、俺だって分かる事は分かるぜ。今まで村崎のした事で無駄だった事は一つもねぇんだ。若干やり方が安全じゃないだけでな。アイツはいつか、国を救うぜ」



 俺は顔を上げて村崎を自慢したが、華宮の眉は下がっていた。吉原はずっと驚いた顔のままだ。

 華宮が紅椿を知っていた事に驚いたのかも知れない。吉原は心配させまいと隠していたろうに。



「あんたやっぱり出て行きなさい丑松。水饅頭でも買っておいで」


「嫌だよ、華さん。俺は」


「そんなに大和屋の旦那が心配なら、さっさと村崎殿を探して此処まで連れといでよ、馬鹿息子!」


「は、はなさん」


「早くお行き!」