キミが刀を紅くした


 その小判金額にする事三十から四十両程度。俺の身体が随分と軽くなったのは言うまでもない。

 俺の着流しの上に散らばった小判を見た男は、自分の着流しをひっ掴んで胸辺りに握っている。その様子では華宮を買うのに俺より金を持たなかったらしいな。



「これじゃ局女郎ぐらいしか身請けは出来ねぇが――まあ、居続け料ぐらいにはなるだろうよ」


「大和屋の旦那、あんた」


「華宮は俺が買う――帰れ」



 低く唸る様な声でそう言えば、女の様にくるまっていた男は自分の荷物をまとめて華岬の階段をかけ降りた。俺はそれを見送ると同時に、吉原の驚く顔を見た。

 金にか、声にか、それとも。



「吉原、全部下げろ」


「え」


「それで何日居続けが出来る?」


「三日も持たないだろうけど……本当に居続ける気? 華さんの所に? 宗柄、正気かい?」


「正気だよ。三日後倍の金額を持ってくるから、それと合わせて七日の居続けでどうだ、華宮」



 華宮は少しばかり戸惑ったが商売と踏ん切りを付けたのか、俺の提案には静かに頷いてくれた。

 そうして吉原に金を下げるように言い付け、吉原を追い出す。



「俺は出ないよ、華さん。宗柄を此処に置いてくなんて無理だ」


「丑松、私は大丈夫だよ」


「知ってる。俺が心配してるのは華さんじゃなくて宗柄の方なんだから。華さんも分かるでしょ、宗柄は全然大丈夫じゃない」



 華宮はため息と共に俺を見た。俺はそんなに分かりやすい男だっただろうか。吉原にここまで心配されるなんて驚きだな。

 俺はまた紅椿の件を怒って俺を警戒しているのかと思ったが。



「ちょいと待っておくれ大和屋の旦那、すぐに丑松を追い出すよ」


「別にいい。お前を買ったからって抱く訳じゃない。だがちょっと不都合ではあるがな――吉原、襖を閉めろ、そこの窓もだ」



 吉原はすぐに頷いて襖と窓を隙間なく閉めた。朝の光は全く入らない。島原最後の客も俺が追い出したから、外は至極静かだった。

 俺は息を吸い、座り込み、
 そして額を畳に擦り付けた。