徳川の事情は国の事情。だが俺はそんな事より村崎の事が気になっていた。消えた幼馴染み。
徳川の屋敷から島原へ向かう途中、色々な所で聞いてみたが誰も村崎の行方を知らなかった。
「何しに来たんだい」
島原に入る一歩手前。吉原の怒気を含む声に俺は歩みを止めた。やはり華宮の件を怒っているか。首代たちも吉原の隣にいる。
警戒されたものだ。
「トシもさっきお松に会いに来てた。彼は総司と村崎殿を探してたけど――宗柄は何しに来たの?」
それはまるで、俺にも同じ様に答えてくれと言っている様で。痛ましい声が耳まで届いて来る。
吉原は良い奴だ。だから迷っているのだろう、俺が敵か否か。
だが俺は迷わず一歩を踏み出して島原に入った。勿論、吉原に答えは返していない。俺が何をしに来たかを言えば吉原は怒るから。
「宗柄」
「大丈夫だ」
「何が!」
腕を取り俺を引き留める吉原だが、俺はそれを振り払って華宮太夫のいる華岬に向かった。
吉原が刀も抜かずに騒ぐものだから、島原中の人間が俺を見ていた。事情を読もうと必死の様だ。
「何が大丈夫だ! 全然大丈夫じゃないじゃないか、宗柄! ちょっと待ってって、ねぇ宗柄!」
煩い。
俺は華岬を潜り、案内される訳でもなく二階へ上がった。お運びの女たちは吉原の姿を見て追うのは止めたが、気にはなる様だ。
何せ俺の後ろでは鬼神が騒ぎ首代がつき歩いているのだから。
華宮の部屋は前に訪れた事があったから迷いはしなかった。真っ直ぐそこに向かう。襖を叩きもせずに勢い良く開けると、中にいた男は心底驚いた顔をしていた。
「な、なにごとだ!」
「おい、退け」
「なな何を言うんだ、わしが幾ら払って華宮を射止めたと……」
「射止めた?」
俺は着流しをすっと脱ぐと、着物をはたはたと両手ではためかせた。するとぎらぎらと輝く金の小判が畳にどんどんと落ちていく。
その量は留まる事を知らない。


