キミが刀を紅くした


「それが何ですか」


「前から疑問だったんです。沖田さんはどうして新撰組に居るんです? なぜ刀を持つんですか?」


「今、それが関係ありますか?」


「ありませんよ。強いて言うなら時間稼ぎですかね。どうすれば沖田さんを止められるか考えてる」



 止める、だと。

 土方さんには斬っても止めると言ったらしいじゃないか。なのに俺には言葉で止めると言うのか?

 俺はそんなに弱いか。
 まだ、そんなにも?



「瀬川の兄さん。俺は強くなりたいんです。前も言ったでしょう」


「なぜ?」



 ――なぜ。


「どうしてそんなに強さを求めるんですか。俺が沖田さんくらいの年の頃は空を飛びたいと考えていましたよ。大和屋と一緒にね」



 どうして強くなりたいか?

 だって俺は強くなけりゃ足手まといになるから。だれかが俺を守るから。俺は守られたくない。刃が来ようと矢が来ようと、俺は己の身で自分を守らなきゃだめだ。

 だって、そうしなきゃ。



「俺は昔から戦に巻き込まれてばかりでしたから。空を見てる暇があれば地に足つけて戦っていた」


「戦っていた? 誰と」


「知りません、名前なんて」


「知ってるはずです。沖田さんが戦っていたのはあなたと一緒に戦っていた仲間が庇った人では?」



 ――仲間。庇った、人。

 その戦いで庇われたのは俺だ。何度も何度も庇われたのは俺。

 俺は俺と戦っている。そうさ。強くなりたいから。庇ってくれた人が傷付かない様にしたいから。守られたくは、なかったから。



「――なぜ強くなりたいんです」



 確認する様に兄さんは言った。俺の頭はぐるぐるぐると考えたくもないのに回っていく。言霊の魔術にでもかかったのだろうか。

 ――俺は人を護りたいんだ。
 だから強く、なりたいんだ。