キミが刀を紅くした


 女は喜んで階段を上がり、そして降りてきた。そして再び俺を引き連れて階段を上がっていく。華宮太夫の部屋の前に立つ俺と女。

 女が戸を開けた。



「あれ、沖田さん」


「何してるんです」


「花札です。華宮さんがお強いと仰るので手合わせをお願いしたんですよ。一度も勝ててませんが」



 華宮太夫は黙って微笑んだ。いつも色街を見下ろしている大人とは思えない程、子供っぽい笑み。それだけ花札を楽しんでるのか。

 俺は部屋に失礼して二人の様子を見ようとしたが、二人は早々に花札をやめてしまった。



「沖田さん瀬川さんに用事かい」


「えぇまあ。良いですか?」


「此処で話しちゃくれないかい」


「――何故ですか? 客の話は無理に聞かないのが太夫たるものじゃ? まあ客じゃないけど」


「嫌なら構わないよ」


「あんまり良くないですね」



 俺は瀬川の兄さんを見た。だが彼は少し柔く笑うだけ。しかも誰よりも大人っぽいから困る。

 これは質が悪い大人だ。



「大丈夫です沖田さん、紅椿の事はもう、彼女は知ってますから」



 ほら見ろ、質が悪い。

 遊女とは遊ばない、秘密はすぐに漏らす、人の心を読む。どうしたらそんな厄介な大人になる。



「困りましたね。他言無用って大和屋の旦那から言われませんでしたか。一応罪なんですよ紅椿は」


「華宮さんは丑松殿の母上ですから。隠し事など出来ないのでしょう? 仕方ありませんでしたよ」


「全く」


「それで、お話とは?」



 紅椿から執行の依頼。目の前にいる華宮太夫を殺してしまえ。そんな事を本人の前で言うのか?

 いっそ、俺が勝手に始末をつけてしまおうか。どうせ此処には居られない身なのだから、一緒だ。



「私を殺すのかい」



 華宮太夫は呟いた。