キミが刀を紅くした


「御用はお済みですか?」



 帰り際、中村の姉さんが茶を出してくれた。俺と土方さんは例によって玄関先に腰を掛ける。

 花簪はいつの間にか人手が戻って賑やかになっていた。この旅館はどうなっているのだろう。密かに紅椿より疑惑の多い場所だ。



「また無茶を言われた。大きな声じゃ言えないがな、あの人はいつも――いや、まあ仕方ないか」


「歳三さんは責任感の強い御方ですから、総司さんに少し身を任せてみてはいかがですか?」


「総司に任せたら俺の身は破滅する。考えるのは俺だけで十分だ」


「おーおー、土方さん頼りになるなあ。じゃあ俺は土方さんの代わりに刀を奮いましょうかねぇ」



 中村の姉さんがくすくすと笑うと土方さんがくすぐったそうに肩をすくめた。これが女に好かれる仕草なんだろうな。多分無意識。



「あ、そうでした。お二方に言伝てを預かっております。新撰組の隊士の方がもしお二人が来たら伝えて欲しいと仰っていまして」


「何だ?」


「今夜、島原門前に紅椿捕縛の為の罠をかけるので来て欲しいと」


「――今夜ですか」


「えぇ。確かにそう仰ってましたよ。今夜来て欲しい、と」



 俺はふと土方さんを見た。



「どうします?」


「どう、だと。それは俺が聞きたい。今から近藤さんを説得したいが……紅椿が島原に来るのは決定事項だからな。難しいだろう」


「何で難しいんで?」


「あからさまだからだろう。俺が島原に紅椿は来ないと言って、逃がしたら。これは新撰組には二つとない間だぞ。下手したら紅椿の件を外されてしまうだろうしな」



 疲れるだろうな。こんなに沢山の事を考えているなんて。さすがと言うべきか否か。本当に人を頼ろうとしない人なんだな。

 言えば良いのに。



「俺が紅椿の方に行きますよ」


「だが総司」


「でなきゃ今の話がまとまらないでしょ。俺が紅椿、土方さんが新撰組に行く。これで良い、完璧」