「……エリュオン皇子。何故我々を追っていたのですか?このような待遇を受ける理由を伺いたいものですが?」


ミラを守るように立つイシュがいつもとは違った。

それに、エリュオン皇子と言われる彼と面識でもあるのだろうか………。


鋭利な剣先を向けられながら考える。

正直とても怖い、立っているのもやっと。


でも、自分より小さなイシュを差し置いて叫ぶ事もできない。


そんな中、くつりと皇子が笑った。



「異界で大人しくしていれば死期が遅れたというのに、ふざけた格好で騎士でも気取るつもりか?」


「悪戯が過ぎるのは貴殿だっ!兵を下げなさいっ!!」


「貴様のような小物に用などない。悪戯にもならんな………」



やれ、



小さな声が聞こえた瞬間、二人に向けられていた剣先が一斉にイシュに向いた。



ダメっ!!




不思議と体が動いた。


全身の力でイシュを引いて、庇うように立つと、世界がひどくゆっくりに見えた。

イシュが何か叫んでいるのが視界の端に映るが、聞こえない。


ただ、迫り来る刃の輝きを見つめる。



怖いけど、もう動けなかった。