すると、それは人だったらしくもぞりと動いて、ふわりと乗ったものを軽く摘まんだ。

「あっ……」

少女が短い声を上げると同時に摘まんだ指先からすーっとそれの全貌を伺った。

黒い手袋に覆われた繊細な指先、自分とは違う大きな手。
草原に寝転がる大きな体、全身が黒づくめで楽そうなシャツにベルトも通していないパンツ、痩せているからか浮き出た鎖骨、不健康そうな青白い肌や喉仏。
段々と上がる視線が顔に到達したときには驚きに目を丸くした。

「まぁ…」

少年のような細い輪郭、しかし明らかに大人といった感じで、整いすぎた鼻梁や酷薄そうな薄い唇、色気たっぷりなやや垂れた瞳は宝石よりも魅惑的に輝く。
無造作な髪があっちこっちにハネてふんわりと風に踊って、その視線を花冠から少女へと移した。

「………お前のものか?」