魔王に捧げる物語






ふわりと風を感じ目を開くと、言葉を失う絶景だった。

見渡す限りの緑の海と、空にかかるほど高い山。

視界に漂う雲は不思議と自分達を避けていく。


冷たい風は少し強い……。



「わぁ………!」




とてつもなく美しい景色に当てはまる言葉が浮かばない。


瞬きも忘れているミラにニルがクスッと笑う。



「ここは世界の最南端、禁断の地。

竜の棲む深淵………カインの住みか」


すみかって………。


と思いながらも、禁断の地という言葉や竜に意識をとられた。


考えていると、
ニルが突然無表情になりミラをギュッと抱え込む。



黒い翼がバサリと音を立てた。




「来るよ」

「え?」




白い何かが物凄い速さで近づいて来る!

肉眼では捉えきれないそれは、一瞬で目の前に現れ、異形が大きな口をあけた。



「きゃぁぁ!!!」





ダメだ、食べられてしまう………!

悲鳴を上げ、ニルにしがみつきながら思った。